空白ちゃん

誰かの裏垢

試験受かった(終)

 教習期限ギリギリに自動車学校を卒業し、免許センターで学科試験を受けるだけとなった。学科試験は免許センターなる所で受けないといけない。免許センターは家から遠く、不合格になれば何度も通わなければならない。よって、一発合格が求められる。ただ、先の不合格で私の運転に対するモチベーションは失われていた。だから勉強する気が起きないのだ。1か月くらいして仕方なく勉強することにした。落ちたら困るので結構真面目にやった。割と(学科試験に対する)自信がついたので試験を受けに行くことにした。

 

当日

 さて、試験当日になった。朝は苦手だ。今日も親に怒鳴られてようやく起きた。電車で旅行する日は目覚ましの鳴る直前に目が覚めるのだが。今日の気分は憂鬱なのだ。学校がある日のように。天気は曇り。今にも雨が降りだしそうだ。いやすでに降っていたかもしれない。結構前の出来事なので記憶があいまいだ。

 家から駅に向かう。自転車を爆走させた。普段学校に行くのと同じように。駅から電車で金沢へ行く。金沢から浅野川線とバスを乗り継いで免許センターへ向かう。何もない日ならどれだけ楽しいだろう。きっと旅行記でも作ったはずだ。電車に揺られて内灘駅に着いた。大雨が降っていた。30分待ってバスに乗り換える。この路線は内灘駅と免許センターの短い路線だ。灰色の空と問題集を交互に眺める。ピンポーン 次は〇〇、〇〇でございます。その度に試験会場が近づいてくる。ああ、このまま宇野気駅まで行かないかな。バスは右折しごつい建物の前に停車した。ピンクのicカードを手に取った。表面は何度も書いては消した定期券印字の跡ある。いつものように機械にかざしバスを降りる。ステップを降りた途端強烈な重力が私を襲った。

 建物では書類を記入してお金を払った。試験までの1時間はまた問題集を眺めた。休みなので人は多かった。もちろん学生が多い(私も学生です)。教室に呼ばれた。試験開始。ひたすらマークシートに色を塗った。100回ほど。塗り終わったら間違った場所に塗ってないか確認した。そうして試験は終わった。教室を出たら右に椅子が並んだ空間がある。椅子の正面にはテレビがある。3秒前に合図しろと映し出されている。何度も練習したあれ。公道を走る人ならやってて当たり前だろう。わざわざ言わなくても。しばらくして数字を羅列した画面に切り替わった。無数の数字から自分が割り振られた数字を見つけた。

 何かの手続きをして昼食にした。ここは食堂がないのでパンを持参した。外の空気を吸いたいので、なんとなく玄関で食べた。玄関には帰りを待つ人がいた。何台かの車が拾っていった。もう雨は止んでいた。

 午後は写真撮影とありがたいお話を聞いた。これから広いアスファルトの海へ繰り出す者への花向けの言葉だった(あるは事務的な話だったかもしれない)。自分もそれを心に留めた。少し早めに終わった。さて、帰ろう。幸い無駄な交通費を払わずに済んだ。本来の終了時刻あたりに迎えのバスが来た。その前にスクールバスで最後の下校する人もいた。道中祝福の言葉の1つや2つ貰ったのだろう。自分が通った学校は薄情なので自力で帰るしかない。無機質な自動放送を浴び、内灘駅に着いた。浅野川線の古い電車に乗った。金沢でまた電車を乗り継いで最寄りまで乗る。

 最寄り駅に着いた時、空が晴れ渡っていることに気づいた。折角外に出たのだから何か買って帰ろうと思い、駅近くのスーパーでアイスを買った。吸引するやつだったので自転車のサドルに跨って吸った。寄り道したので帰るルートがいつもとずれてしまった。道幅が狭いところを走らなくてはならない。安全を確かめ、上を見た。朝は雨だったのが嘘のようだ。免許センターを出たのが3時頃だったのでもう夕方だ。きっと明日も晴れるだろう。ある場所を通った。去年までここにあった建物が草1本残さず綺麗に整地されていた。そうして家に帰った。あれから何が変わったのだろう。結局運転は楽しくならなかったし、自信がつくこともなかった。

あの日の青空を今でも覚えている。

                                     (終)

 

あとがき

運転免許シリーズ終了です。ここまで読んでくれた人がいたら嬉しいし、誰にも読まれてなかったら将来読んでくれる人に感謝します。免許を取るのは大変だというのをみんなにしってほしいとおもいます。ぼくみたいにめんきょをとるのにこれだけつらいおもいをしまうひともいるんだとしってほしいです。それにじだいはだつたんそです。じかようしゃはじだいおくれだとおもいます。でんしゃばすばんざい!!

 

 ところで上級国民こと飯塚幸三氏を覚えていますか?あの親子を轢き殺したじいちゃんです。私は彼に引き殺された親子もかわいそうですけど彼自信ももかわいそうだと思います。なぜって?上級さんも別に親子を殺すつもりはなかったはずです。しかし一度の運転ミスで折角自分が積み上げてきた社会的地位を失うのです。結局、上級国民の証であった瑞宝重光章が剥奪されたそうです。車を運転するのは恐ろしいことです。90年間の功績が一度のミスで無に帰すんですよ。運転は高い金を払って自分の社会的地位を賭けるギャンブルです。その割にはリターンが移動時間が数分短縮されるだけってあまりにも分が悪くないですか。免許を取る前に一度考えてみてください。